「もしもし、至急この口座に振り込んでおいて」——電話の声は、間違いなくいつもの上司。
でも、それがAIで作られたニセの声だとしたら、あなたは気づけるでしょうか。
いま、数秒の音声サンプルから本人そっくりの声を作り出す「AI音声なりすまし詐欺」が急増しています。
警察庁のまとめでは、2025年の法人向けインターネットバンキング不正送金は143件・約45億円。
しかも、事前録音を流すだけでなく、相手の受け答えにその場で反応する「会話できる」タイプまで登場しています。
この記事では、どんな手口なのか、どう見抜くのか、今日からできる備えを、AIを使う側としてその精度の高さに驚いた立場から、正直にお話しします。
※被害額などは警察庁「令和7年におけるサイバー犯罪被害」等の公表値・各種報道にもとづく目安です。
手口は日々変化するため、最新は公的機関(警察庁・国民生活センター等)の情報もご確認ください。
結論:声も顔も”本物そっくり”に作れる時代。合言葉と折り返しで守る
先に結論です。
いまのAIは、数秒の音声から本人の声を、写真から動く顔を、本物と見分けにくいレベルで作れます。
だからこそ、「声だから本人」「顔が映っているから本人」という思い込みが、いちばん危険です。
守り方はシンプル。
お金や個人情報が絡む連絡は、一度切って、別のルート(本人の番号にかけ直す等)で確認する。
家族や会社で「合言葉」を決めておくのも有効です。
まずは、何が起きているのかを見てみましょう。
いま何が起きている?数秒の声で”分身”が作れる
これまでの詐欺と決定的に違うのは、AIが「本人らしさ」そのものを作れるようになった点です。
| これまでの詐欺 | AIなりすまし詐欺 |
|---|---|
| 他人が”それっぽく”演じる | 本人の声・顔をそっくり複製 |
| 声や話し方で気づけた | 声だけでは見抜きにくい |
| 文章に不自然さが残る | 自然な日本語で違和感が少ない |
数秒の音声(SNSの動画や留守電でも十分)から声を複製し、公開された写真からビデオ通話でも違和感のない”分身”を作る——そんな技術が悪用されています。
「声を聞いたから本人に違いない」が通用しなくなった、これが最大の変化です。

最新の動き|法人被害45億円、”会話できる”AI詐欺へ
2026年に入り、脅威はさらに一段進みました。
警察庁のまとめによると、2025年の法人向けインターネットバンキング不正送金は143件・約45億円にのぼります。
事前録音の音声を一方的に流すだけでなく、相手の受け答えにその場で反応する”会話できる”タイプのボイスフィッシングが確認されています。
手口も巧妙です。
発信番号を偽装して正規の代表番号に見せかけたり、SNSで先に接点を作ってから電話に持ち込むなど、「本物らしさ」を積み重ねて警戒を解いてきます。
個人の注意力だけで全部を見抜くのは、正直むずかしくなっています。
そこで元警視庁の専門家が示す組織の備えが、頭文字を取った「PTP」という考え方です。
個人任せにせず、職場の仕組みとして3層で守ります。
| 層 | やること | 具体例 |
|---|---|---|
| Protocol(ルール) | 送金・変更は必ず正規手順で | 電話だけで振込しない/必ずかけ直す |
| Technology(技術) | 確認・検知の仕組みを用意 | 正規番号の登録、通話確認の仕組み |
| People(教育) | 全員が手口を知っておく | 定期の注意喚起、実例の共有 |
非エンジニアでも、まずは「Protocol=職場のルール」から始めれば十分です。
技術の導入はそのあとでも間に合います。
会社員が狙われる、3つの典型手口
他人事ではありません。
会社員が巻き込まれやすいのは、主にこの3つです。
- 上司・取引先なりすまし:「至急、この口座に振込を」「機密だから内密に」と、緊急性と秘密を強調して判断を急がせる
- 家族の緊急電話:子どもや親の声で「事故を起こした」「お金が必要」と、動揺させてお金を要求
- ロマンス・投資詐欺:AIで作った”理想の相手”がSNSで接近。ビデオ通話も顔をすり替えて信用させ、投資に誘導
どれも共通するのは、「急がせる」「秘密にさせる」「感情を揺さぶる」という心理の揺さぶり。
ここに気づけるかが分かれ目です。
会社の情報を扱うときの注意は会社の情報をChatGPTに渡す前に必ずやる5つの安全チェックもどうぞ。

危険信号|こんな連絡は疑う
見抜くコツは、”声そのもの”ではなく「シチュエーション」を疑うことです。
次のサインが出たら要注意。
| 危険信号 | なぜあやしい? |
|---|---|
| 「今すぐ」「至急」と急かす | 考える時間を奪うのが常套手段 |
| 「誰にも言うな」と口止め | 第三者に相談されると詐欺がバレる |
| いつもと違う連絡手段・口座 | 正規のやり取りから外そうとする |
| お金・コード・個人情報の要求 | 最終目的はほぼこれ |
1つでも当てはまったら、その場で判断しないのが鉄則。
相手が本物でも、折り返し確認して困ることはありません。

私の場合|AIの「精度」を知って正直こわくなった
<実際にやってみて>私は非エンジニアの会社員ですが、AIを使う中で、音声や文章を生成する精度の高さに、正直ぞっとしたことがあります。
試しにAIで文章を作らせると、知人の口調に寄せた自然な日本語が、あっという間に出てくる。
声の合成技術も、少し調べただけで「これは素人には見抜けない」と感じるレベルでした。
作る側の手軽さを知っているからこそ、「受け取る側」としての怖さが分かるんです……と言いたいところですが、正直に言えば、これは知識として身構えるようになった、という段階です。
だからこそ私は、お金や重要な話は「一度切って、自分からかけ直す」を徹底するようにしました。
便利なAIの裏側を知ることが、いちばんの防御になると感じています。
AIに個人情報を渡すリスクはAIに個人情報、入れたら違法?2026法改正で知る3点にもまとめています。
今日からできる、3つの防衛策
むずかしい対策は要りません。
この3つを家族や職場で共有するだけで、被害の多くは防げます。
- 「一度切って、かけ直す」を徹底:お金・個人情報が絡む連絡は、相手の”正規の番号”に自分からかけ直して確認
- 家族・職場で合言葉を決める:「本人にしか分からない質問」を用意。緊急電話ほど、まず合言葉を確認
- SNSの公開範囲を見直す:声や顔が写った動画は、AIの”材料”になる。公開範囲を絞るだけでリスクは下がる
職場では、こんな一文を合言葉ルールとして共有しておくと安心です。
コピペして使ってみてください。
【なりすまし対策 職場ルール 例】
・振込/送金の指示は、電話やチャットだけで実行しない
・必ず「登録済みの番号」にかけ直して本人確認する
・「至急」「内密に」と急かされたら、いったん上長に相談する
※このルールは、相手が本物でも必ず実行する
ポイントは、「相手が本物でも、必ず確認する」と決めてしまうこと。
例外を作らないほうが、迷わず守れます。

よくある質問
Q. 本当に声だけで見抜くのは無理ですか?
A. 完璧に見抜くのは難しくなっています。
だからこそ「声で判断しない」のが基本です。
少しでも不自然な間や機械的な抑揚を感じたら、いったん切って、別ルートで確認してください。
Q. 自分は有名人でもないのに狙われますか?
A. 狙われます。
数秒の音声や数枚の写真があれば材料になるため、一般の会社員や家族も対象です。
SNSの公開情報が使われるケースが増えています。
Q. もし振り込んでしまったら?
A. すぐに金融機関と警察(#9110や最寄りの警察)、消費者ホットライン(188)に連絡してください。
早いほど被害を止められる可能性が上がります。
一人で抱えず、すぐ相談を。
まとめ
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| 何が変わった | 数秒の声・写真で本人そっくりの分身が作れる |
| 狙われる場面 | 上司なりすまし・家族の緊急電話・投資/恋愛 |
| 見抜き方 | 声でなく「急かす・口止め・金銭要求」を疑う |
| 個人の防衛策 | かけ直す・合言葉・SNS公開範囲を見直す |
| 職場の備え | PTP(ルール・技術・教育)の3層で守る |
「まさか自分が」と思う人ほど狙われます。
でも、恐れすぎる必要はありません。
大事なのは、お金や大切な話が絡んだら、必ず一度立ち止まって確認する——この一拍だけ。
今日からできる小さな一歩として、まずは家族や職場で「合言葉」を一つ決めてみてください。
その一言が、AI時代の”最後の砦”になります。
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